オープンソースのプライベートLTEと5Gネットワーク

by Canonical on 12 July 2021

今日では、自分用のWi-Fiネットワークをセットアップするのは簡単です。ルーターをオンラインで注文し、電気のコンセントに接続し、パスワードを設定するだけで使用できます。Wi-Fiは高速で信頼性が高く、使いやすいですが、広い範囲をカバー、または数百もの小さなデバイスを接続しようとすると、たちまち非効率的で高価なものになってしまいます。このような場合、ローカルの移動体通信事業者と契約するしか方法がないのでしょうか? そんなことはありません。オープンソース技術のおかげで、自分用のLTEや5Gネットワークを構築することができます。 

プライベートモバイルネットワークを構築する理由

LTEや5Gなどのモバイル技術を使用すると、高い能力を持つプライベートネットワークを構築できます。わずかな量の機器で、広大な地域をカバーすることも可能です。また、適切な周波数を選択すれば、壁を隔てた場所や地下でも優れたパフォーマンスが得られます。モバイルネットワークは、Wi-Fiよりもはるかにセキュアです。もちろん、ユーザー機器(UE)の場所を1メートル以内の精度で追跡する、または高度な信号処理やテレメトリーなど、これまでは通信事業者しか持っていなかった、すべての能力と機能も得られます。

オープンソースのモバイルネットワークの構築を開始する方法

LTFや5Gのネットワークを構築するには、多くの初期投資が必要だとお考えかもしれませんが、幸い、それほど多くの費用は必要ありません。最初に必要な最小限のツールキットは、LimeSDR miniとRaspberry Pi 4です。これらの合計コストは300ドル未満です(すでに携帯電話を持っていることを想定)。

キャリア集約などの高度な機能を希望する、または最高速度の実現や、数百ものIoTデバイスとの接続を希望する場合は、Ettus x310や、計算用の高性能なX86サーバーなどに1万ドル程度の費用が必要となります。ソフトウェアスタックとしては、UbuntuとsrsRAN(https://github.com/srsran/srsRAN)をお勧めできます。 

Lime SDR

RaspberryPi

エンタープライズにおけるプライベートモバイルネットワークの使用事例

多くの企業では、自社のデータや音声の使用事例のため、セキュアで、高速で、自動化され、広大な地域をカバーでき、ビルの中でも地下のトンネルでも信頼性が高いネットワークが必要です。

プライベートのLTEや5Gのネットワークはこの要求を満たし、オープンな技術を基礎としていれば価格対パフォーマンスにも優れています。これらのネットワークは、次のような多くの産業で実装されています。

  • キャンパス – 大学、病院、大規模なオフィス。いずれも大勢の人々が存在し、多数のデバイスを接続する必要があります。プライベートのモバイルネットワークにより高い費用対効果が得られ、大学にとっては貴重な学習の機会となります。
  • 石油とガス – 産業用IoTが多数存在する過酷な環境で、地下で運用され、LTEや5Gで提供される信頼性とセキュリティが必要とされます。 
  • 公共部門 – スマートシティ、博物館・美術館、スタジアム、公共輸送機関。
  • 軍隊 – プライベートの5Gネットワークは、現代的な接続された軍事作戦の鍵となります。センサーやドローンによる状況認識により、戦力を何倍も有効に活用できます。ただし、最新のモバイル技術のみで実現可能なパフォーマンスとセキュリテイが要求されます。
  • 製造 – Mercedes BenzとBoshはすでに、プライベート5GネットワークとMECを使用して生産ラインを追跡し、製造プロセスを最適化しています。決断は迅速かつ的確に行う必要があります。このような使用事例では、パブリッククラウドにデータを送信するのは遅すぎるため、ローカルのマイクロクラウドを使用するほうがはるかに良い結果が得られています。

エンタープライズ級のプライベートモバイルネットワークを構築する方法 

プライベートのLTEまたは5Gネットワークの構成図は次のようになります。

  • ユーザー機器 – 携帯電話、IoTデバイス、ドローン、自動運転車両など、あらゆる機器が含まれます。
  • 無線アクセスネットワーク – 基地局、アンテナ、L1/L2処理を含む部分です。  
  • 進化したパケットコア – LTE上で集約された音声とデータを供給するためのフレームワーク。
  • マイクロクラウド – エッジでのオンデマンドコンピューティング用の新しいクラスのインフラストラクチャ。

このようなネットワークで適切に動作するオープンソース実装は次のようになります。

  • OpenRANを使用した非集約型のオープンな無線アクセスネットワークにより、UbuntuオペレーティングシステムでRIC、RU、CU、DUを実行します。
  • Magmaコアが最先端のEPCを、フェデレーションゲートウェイとアクセスゲートウェイとともに提供します(1.15からUbuntuに移行されました)。
  • Charmed Kubernetesにより、RANおよびEPC用のコンテナインフラストラクチャを実現します。
  • Charmed OpenStackにより、通信事業者グレードのプライベートクラウドを簡単に運用できます。
  • MAASLXDMicroK8sを組み合わせることで、最先端のマイクロクラウドを構築でき、エッジアプリケーションをVM、コンテナ、ベアメタルとして実行して、DPDK、SR-IOV、NVIDIA GPUアクセラレーションなどすべてのEPA機能を使用できます。

プライベートのLTEや5Gのネットワークについての詳細情報

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