Ubuntu ProによりリアルタイムUbuntuをAmazon EKS Anywhereのお客様が利用可能に
by Canonical on 15 October 2024
Canonicalは、今年前半にバルセロナで開催されたMobile World Congress(MWC)2024で、リアルタイムUbuntuがAmazon Elastic Kubernetes Services Anywhere(EKS Anywhere)で利用可能になったことを発表しました。超低レイテンシのデータ処理をサポートする信頼性の高いリアルタイムUbuntuにより、通信事業者はAmazon EKS Anywhere上で自社のOpen Radio Access Network(RAN)ソフトウェアワークロードを実行できます。
この開発は、Amazon EKS AnywhereをOpen RANワークロード用に理想的なプラットフォームにするための、パートナー企業間の共同作業の一部として行われたものです。MWCイベントで、これらの企業のリーダーたちは、この開発によって何が得られたのか、将来は何が可能になるかを話し合いました。議論の中心はAmazon EKS Anywhere上でOpen RANを正しく展開するためのロードマップでした。パネルディスカッションには、NTTドコモ、Qualcomm、NEC、Canonicalの代表者も参加し、司会進行はAWSが行いました。このブログでは、Canonicalのエンジニアがこの開発を完成させるためどのように協力したか、そしてAmazon EKS Anywhere上でリアルタイムUbuntuを動作させる利点について解説します。
通信でOpen RANが重要な理由
通信事業者は常に、収益を生み出す新しいサービスを開始すると同時に、運用コストを削減する、革新的な方法を探しています。Open RANを適切なインフラストラクチャソリューションとともに使用すると、通信事業者はオープンで標準化されたソリューションAPIにより相互運用可能な、費用対効果が高いソリューションをテクノロジープロバイダーが提供できるようなエコシステムを得られます。このテクノロジーによって、通信事業者は自社のRANシステムを、自社のエッジインフラストラクチャ全体にわたって非集約型の、分散したコンポーネントとして実行できるようになります。仮想RAN機能をソフトウェアとして実装することで、ネットワーク運用の柔軟性と運用効率が向上します。
リアルタイムカーネルとは
リアルタイムOSカーネルがあれば、アプリケーションの実行時にオペレーティングシステムのカーネルにレイテンシ制限のあるソフトウェアアプリケーションを運用できます。
レイテンシの要件が厳しい通信アプリケーションの場合、現在ではリアルタイムOSカーネルが必須のものとなりました。これにより、アプリケーション、外部システム、デバイスの間で情報を効率的に処理および配送でき、パフォーマンスが大幅に向上します。
Amazon EKS AnywhereにおけるリアルタイムUbuntuのメリット
RANソフトウェアのワークロードは、情報の処理と配送における遅延に大きな影響を受けます。このため、NTTドコモのような通信事業者にとって、リアルタイムカーネル機能をAmazon EKS Anywhereに組み入れることは不可欠です。エッジロケーションにおいて、これらの機能は同社のOpen RAN展開に極めて重要で、これによって仮想RAN機能が効果的に動作するようになります。実際に、仮想RANワークロード以外にも、Amazon EKS Anywhereのようなクラウドネイティブのインフラストラクチャで、時間の影響を強く受けるビジネスアプリケーションを使えるようにするにはリアルタイムOSが極めて重要で、このような目的にCanonicalのリアルタイムUbuntuは最適です。
開発の過程
Mobile World Congressのパネルディスカッションにおいて、Canonicalで通信担当の最高テクノロジー責任者を務めるArno Van Huysteenは、パートナー企業との共同作業と、革新的なソリューションを作り出す能力により、お客様が真に必要としているものを提供することを強調しました。たとえば、Canonicalのエンジニアは統合システムにおいてアウトオブツリーのカーネルドライバを可能にし、当社の方法によりプロセスが可能な限り円滑になることが保証されます。
Canonicalのエンジニアは、Ubuntuリアルタイムカーネルで、必要な一連のブートパラメータや、プロセスと特定のCPUとのバインドを微調整し、Amazon EKS Anywhereの運用環境で優れたパフォーマンスを得るための正確なガイドラインを、AWSのエンジニアに提供しました。このプロセスは、お客様とパートナーがリアルタイムカーネルを必要とする同様なワークロードを実行するため役立つよう、文書として公開されています。
オペレーティングシステムの最適化に加えて、CanonicalのエンジニアはKubernetesディストリビューションであるAmazon EKS Anywhereにも取り組み、Canonicalのオープンソースソフトウェアセキュリティ向けのサブスクリプションサービスであるUbuntu Proに必要な変更と統合を組み入れました。Ubuntu Proを使用すると、Ubuntuコンピュータは25,000を超えるソフトウェアパッケージの拡張セキュリティサポート(ESM)を受けられるようになります。
Amazon EKS Anywhereが動作可能ないくつもの環境にわたり、さまざまな展開シナリオで円滑な動作を保証できるよう、大規模なテストが行われました。Amazon EKS AnywhereがUbuntu Proのイメージとシームレスに統合されたことで、通信事業者はリアルタイム処理能力と、Linuxのオープンソースソフトウェアでは最も包括的なセキュリティとコンプライアンスのサポートを活用できるようになりました。これにより、Amazon EKS Anywhere上のUbuntu Proは、高性能でセキュアなシステムを求める通信事業者向けの優れたプラットフォームとなりました。これにより、NTTドコモがリアルタイムUbuntuとEKS Anywhereを選択したのをはじめとして、通信事業者によるOpen RAMの展開がただちに促進されると思われます。
Canonicalの通信事業者向けソリューションの詳細
Canonicalの通信サービスについてさらに詳しくは、https://ubuntu.com/telcoをご覧ください。
オープンソースソフトウェアのセキュリティを守る包括的なサブスクリプション個人利用は無償。Ubuntu Pro
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