Canonical、Ubuntu 25.04 Plucky Puffin
by Canonical on 5 May 2025
Ubuntuの最新中間リリースでSpringなどの人気フレームワークに対応する「devpack」を導入。幅広いハードウェアでパフォーマンスを強化。
Canonicalは本日、Ubuntu 25.04(コードネーム「Plucky Puffin」)をリリースしました。ubuntu.com/downloadからダウンロードとインストールが可能です。
Ubuntu 25.04は最新のGNOME 48を採用し、トリプルバッファリングに対応するほか、インストールと起動を改善しました。Springに対応した「devpack」により、Ubuntuで利用可能なツールチェーンが充実。Canonicalのパートナー各社によるシリコン対応により、Intel GPUでのAI処理速度が向上し、AMD SEV-SNP上でのコンフィデンシャルコンピューティングがサポートされました。
「Plucky Puffinは、最新のオープンソースデスクトップテクノロジーと、高品質な開発ツールをUbuntu上ですぐに利用できるようにすることに重点が置かれたリリースです。Ubuntu 25.04では、Intel GPU全体でパフォーマンスが向上しているほか、ARM64ハードウェアを利用するユーザー専用に構築された新しいISOが提供されます。また、AMD SEV-SNPでのコンフィデンシャルコンピューティングのサポートが強化されているため、Ubuntuはパブリッククラウドとプライベートデータセンターのどちらでも、AIワークロードを安全かつ大規模に展開するためのターゲットプラットフォームとなります。」
Canonical、Ubuntuエンジニアリング担当副社長、Jon Seager
GNOME 48がユーザー体験を向上
常に最新のGNOMEリリースを提供するというCanonicalの方針により、Ubuntu 25.04ではGNOME 48を採用しました。GNOME 48には複数の改良点があり、充電間隔を最適化することでノートPCのバッテリー寿命を延ばす「バッテリーいたわり」モードなどの新機能が追加されています。新しい「ウェルビーイングパネル」ではスクリーンタイムが記録され、ユーザーが自身の習慣を管理できます。GNOME 48により、Ubuntuは標準でHDRをサポート。Canonicalが開発したトリプルバッファリングパッチは、レンダリング能力の低いデスクトップでもパフォーマンスを高め、スムーズな動作を確保します。このパッチは、今回初めてGNOMEアップストリームプロジェクトに組み込まれたもので、GNOMEデスクトップ環境のすべてのユーザーにメリットをもたらします。
Plucky Puffinでは、デフォルトのPDFリーダーとして「Papers」を採用しました。Papersはモダンなデザイン、高いパフォーマンス、使いやすさが特徴です。
Mozillaの位置情報サービスが廃止されたことに伴い、Ubuntu 25.04は新しい位置情報プロバイダーとしてBeaconDBを採用しました。新しい位置情報サービスにより、タイムゾーンの自動検出、天気予報、夜間照明などの機能をデスクトップで使用できます。
Linux 6.14カーネルでスケジューリングを改善
このリリースでは、Canonicalの新しいポリシーに従い、最新のLinuxカーネルが提供されます。カーネル開発者は、新しいスケジューリングシステムであるsched_extを利用できます。このシステムでは、スケジューリングポリシーをeBPFプログラムとして実装するメカニズムが提供されます。これにより、スケジューリングの決定を標準のユーザー空間プログラムに委ねることができるため、ユーザー空間でアクセス可能な任意の言語、ツール、ライブラリ、またはリソースを使用して、完全に機能するホットスワップ可能なLinuxスケジューラを実装できます。
WinNTの同期プリミティブをエミュレートする新しいNTSYNCドライバも利用可能になりました。これにより、WineおよびProton(Steam Play)で動作するWindowsゲームのパフォーマンスが向上します。
bpftoolsおよびlinux-perfツールは、カーネルのバージョンから切り離されているため、コンテナを扱う開発者は依存関係の管理が容易になります。現在これらのツールは、独自のパッケージで提供されています。
その他の機能については、Linux 6.14アップストリームの変更ログをご覧ください。
インストールと起動を改善
インストーラには高度なパーティショニングオプションと暗号化オプションが用意されているほか、BitLockerに対応した既存のWindows環境とのやり取りが強化されているため、Ubuntuを他のオペレーティングシステムと並行してインストールするユーザーに対して、優れたユーザー体験を提供します。
また、今後のリリースでの起動をさらに改善するため、Ubuntu DesktopとUbuntu Serverには、initramfs-toolsの代わりにDracutが組み込まれる予定です。Plucky PuffinはDracutを実験的な機能として提供しており、Ubuntu 25.10への組み込みに先立ち、ユーザーがテストできるようにしています。
最先端のツールチェーンとdevpack
Ubuntu 25.04には、Python、Golang、Rust、.NET、LLVM、OpenJDK、GCCに対応した最新のツールチェーンが用意されています。
OpenJDK 24ea、OpenJDK 25ea、GCC 15など、早期アクセスのアップストリームバージョンも利用可能です。Snapcraftの.NETプラグインにより、.NETコンテンツのsnapが改善されているほか、MSBuildオプションとの整合性が向上しています。
今回のリリースでCanonicalは、Ubuntuでのツールチェーンの利用範囲をフォーマッターやリンターなどの広範な開発者向けツールに拡張し、「devpack」と呼ばれるsnapバンドルで最新バージョンを提供します。
その第一弾となるのが新たなsnapの「devpack-for-spring」であり、最新のSpring FrameworkやSpring BootプロジェクトをUbuntuで利用できるようになります。これによりアプリケーション開発者は、最新のSpringプロジェクトバージョン(Spring Framework 6.1および6.2、Spring Boot 3.3および3.4)を使用して、アプリケーションを容易にビルドおよびテストできます。
管理性とネットワーク制御の改善
Canonicalは、システム管理者向けのID管理機能およびアクセス管理機能の提供を継続しており、すべてのUbuntu LTSリリースで利用できるようになります。これには、UbuntuのクラウドIDプロバイダー向けの新しい認証サービスであるAuthdに対する多数の機能強化が含まれます。現在Authdは、Entra IDに加えGoogle IAMもサポートしています。ADSys(Ubuntu用のActive Directoryグループポリシークライアント)は、最新のPolkitをサポートしており、証明書の登録に関する改善とバグ修正が行われています。
NTS対応のタイムサーバーが利用可能になったため、Ubuntu 25.04は安全に提供されるネットワーク時間をデフォルトで使用できます。
NetworkManagerには、wpa-psk-sha256で保護されたWi-Fiネットワークのサポートが追加されており、バックエンドでルーティングポリシーを構成できるようになりました。
Plucky Puffinは、Netplanとsystemd-networkdのwait-onlineサービスを使用してDNS解決を確認する最初のリリースでもあり、システムがオンラインとみなされるまで待機する信頼性の高い方法を提供します。
ハードウェアイネーブルメントの注目点
Canonicalは、幅広いハードウェアでUbuntuを利用できるよう継続的に取り組んでいます。新しいARM64 Desktop ISOが登場したことで、早期導入ユーザーはARM64の仮想マシンやノートPCにUbuntu Desktopを容易にインストールできます。
「Qualcomm Technologiesは、Canonical社と協力できることを誇りに思い、Snapdragon®搭載のデバイス上でシームレスなUbuntu環境を実現できるよう全力で取り組んでいます。Ubuntuの新しいARM64 ISOは、将来的なSnapdragonへの対応を可能にしてくれるものであり、両社の協力によるAIのイノベーションと普及を実現してくれます。」
Qualcomm Technologies, Inc.、エンジニアリング担当SVP、Leendert van Doorn氏
Ubuntu 25.04は、Intel® Arc™ GPU内蔵のIntel® Core™ Ultra 200Vシリーズ、およびIntel® Arc™ B580/B570「Battlemage」ディスクリートGPUを完全にサポートしています。新たに追加された特長としては、Blender(v4.2以降)などのIntel Embree対応アプリケーションにおけるGPUおよびCPUレイトレーシングレンダリング性能の向上が挙げられます。GPU上のレイトレーシングハードウェアアクセラレーションにより、レイトレーシングコンポーネントが2~4倍高速化されるため、フレームレンダリングが20~30%向上します。これらのGPUでは、ハードウェアアクセラレーションによるAVC、JPEG、HEVC、AV1の動画エンコーディングがサポートされているため、これらの形式を使用する場合は、ソフトウェアエンコードと比較してパフォーマンスが向上します。また、Intel Xe GPU向けに新たに導入されたCCS最適化とデバッグサポートを備えたIntel Compute Runtimeにアクセスできるため、開発が容易になり、AIワークロードの速度が向上します。
「Canonical社とIntelは、IntelのハードウェアとソフトウェアがUbuntuでシームレスに動作できるようにするため、長期にわたって協力してきました。そして今回、クラス最高のXe2内蔵GPUおよびディスクリートGPUによって、再び成果を上げることができました。」
Intel Corporation、GPUおよびシステムソフトウェアエンジニアリング担当副社長兼ゼネラルマネージャー、Hillarie Prestopine氏
コンフィデンシャルコンピューティングのサポートをオンプレミスのユースケースに拡大
コンフィデンシャルコンピューティングは、セキュリティアーキテクチャにおける重要なパラダイムシフトであり、仮想マシンのワークロードを不正アクセスから保護します。このテクノロジーは、ハードウェアで保護されたTrusted Execution Environment(信頼できる実行環境)内で動作し、システムメモリ内でもデータを暗号化したままにすることで、実行時に特権システムソフトウェアや他の仮想マシンから、機密性の高いコードとデータを保護します。
Canonicalは、長年にわたりコンフィデンシャルコンピューティングを戦略的に重要な分野と認識してきました。Ubuntuは、主要なパブリッククラウドプロバイダーのゲストOSとしてコンフィデンシャルVMをサポートした最初のLinuxディストリビューションであり、AMD SEV-SNPおよびIntel TDXテクノロジーのサポートが組み込まれています。
本日Canonicalは、UbuntuがQEMU 9.2によって、仮想化ホスト上でAMD SEV-SNPをサポートできるようになったことを発表いたします。これにより、オンプレミスのデータセンターにおいて、ホストOSとゲストOSの両方でUbuntuを使用し、コンフィデンシャルVMを導入できるようになります。
AMD社のソフトウェア開発担当コーポレートバイスプレジデントであるFrank Gorishek氏は次のように述べています。「Canonical社によるコンフィデンシャルコンピューティングへの継続的な投資は、ますます複雑化する環境におけるワークロード保護の重要性を反映した取り組みといえます。Ubuntu 25.04がAMD SEV-SNPのホストをサポートするようになったことで、AMDハードウェアベースのセキュリティ機能を最大限に活用し、仮想マシンの分離、メモリ整合性の確保、攻撃対象領域の縮小を実現できます。Canonical社との協力により、安全で拡張性の高いソリューションを企業のインフラストラクチャ全体に拡大できることを誇りに思います。」
次の段階
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Canonicalについて
Ubuntuを提供するCanonicalは、オープンソースのセキュリティ、サポート、サービスに特化した企業です。ポートフォリオには、極めて小型のデバイスから大規模なクラウド、カーネルからコンテナ、データベースからAIまで、重要なシステムを幅広く含みます。Canonicalは、大手技術ブランド、スタートアップ企業、行政、ホームユーザーを取引先に持ち、すべての皆様に信頼性の高いオープンソースを提供します。
詳細はcanonical.comをご覧ください。
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Snapdragonは、Qualcomm Incorporatedの商標または登録商標です。
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