CyberDog:Ubuntuで動く4足歩行ロボット

by Canonical on 10 December 2021

今年の後半、中国の大手テクノロジー企業Xiaomiは、4足歩行の実験的なオープンソースのロボット「CyberDog」を公開しました。同社はこのデジタル犬がロボット開発環境の向上とロボット業界の発展を促進するとPRしています。今回、Canonicalでは、この4足ロボットの仕様とともに、これがUbuntuによってオープンソーステクノロジープラットフォームとなることをご紹介します。

Xiaomiは自社の製品に対して明確なビジョンを持っています。XiaomiのプロジェクトマネージャーであるHuang Changjiang氏は、次のように説明しています。「CyberDogは未来からやってきた、開発者のテクノロジーパートナーです。自社開発の高性能サーボモーターを搭載し、高度な処理能力、視覚的検出システムと音声対話システム用の組み込み型人工知能を備え、さまざまな生体工学的モーションジェスチャーに対応しています。」

CyberDog:4足ロボットの特長と利点

CyberDogプロジェクトの目的は、4足ロボットの開発プラットフォームを構築することです。Xiaomiは、オープンソースの開発環境を通じてコミュニティによるコントリビューションおよびメンテナンス体制の確立と活用を目指しています。これによりプラットフォームは、充実したアプリケーションのエコシステムや、ロボット工学(ロボティクス)分野で利用されている技術との互換性を生かせます。Xiaomiにとっての最終目標は、ロボティクス業界における技術的優位を強化することです。その見返りとして、Xiaomiは低価格で最先端の使いやすいロボティクスプラットフォームを提供しています。

価格

まずは価格です。Boston Dynamicsが開発した4足ロボットである「Spot」は、CyberDogの主要な競合製品です。Spotの基本価格は74,000米ドルです。一方、CyberDogの基本価格は1,540米ドルです。この手頃な価格により、多くの研究機関やスタートアップ企業が4足ロボット向けのロボティクスアプリケーションの開発を加速できます。

自社開発

しかしCyberDogは品質を犠牲にして低価格を実現したわけではありません。価格は手頃でも安物ではないのです。CyberDogの自社開発の高性能サーボモーターは最大トルク32Nm、220rpm、速度3.2m/sの能力を持ち、ロボットの高トルク、高速動作、迅速な応答を可能にしています。高度な性能により、CyberDogは後方宙返りや難しい動作など、複雑な動きを簡単に実行できます。

認識・検知

CyberDogには生物学上の直観的なインタラクティブ機能や、周囲の認識や分析の機能もあります。11基の高精度センサーが常時待機状態になっているため、周囲のわずかな変化も検知できます。CyberDogには超高精度の視覚的検知システムが組み込まれており、自動認識、SLAMマッピング、ナビゲーション、障害物回避の機能もあります。

Huang氏は次のように続けます。「Xiaomiは人間の挙動検知技術や歩行者認識技術も搭載しています。顔認識技術を使えば、広い場所で持ち主(飼い主)について歩くなどペットのような機能を持ち、アルゴリズムを通じてナビゲーション地図を作成したり、自動的に次の目的地点までの最適なルートを考えたりすることも可能です。」

Ubuntuを用いたロボティクスエコシステムの活用

CyberDogのオペレーティングシステムはUbuntu 18.04です。このことはロボティクス開発者にとっては驚きではありません。Xiaomiは、専有技術をベースにして技術的に孤立したプロジェクトを進めることのリスクを理解しています。Huang氏は次のように説明します。「CyberDogにとって重要なのはオープンソースです。これが互換性と成長を確保し、開発者は自由に挑戦できます。それがCyberDogの狙いです。」

ロボティクス向けソフトウェアスタックのサポート

10年以上にわたり、Ubuntuはロボティクスコミュニティをサポートし、複数のオープンソースロボティクスプロジェクトに安定した基盤を提供しています。UbuntuはROS(Robot Operating System)のTier 1 OSであり、ROS 1とROS 2の両ディストリビューションをネイティブでサポートしています。また、PX4など、ドローン開発者の充実したソフトウェアスタックもサポートしています。自動車に関しても、Ubuntuはオープンソースプロジェクトにとって中心的なOSであり、レーシングカー「Dallara AV-21」で利用されています。ROSは、CyberDog向けにUbuntuが開放している充実したオープンソースインフラストラクチャの1つです。

「当社はROS 2の現状と将来に信頼を置いています。充実したライブラリとツールによって、ロボティクス開発者に市場対応の手段を提供しています。CyberDogは、最高のハードウェアでこのROSを活用するためのプラットフォームを提供しています。UbuntuならROS導入が容易であり、二次的な開発もスムーズです。当社は、このようなCyberDog向けアプリケーションやアルゴリズムの充実したエコシステムを開放することを目指しています。」(Huang氏)

セキュアな設計

また、CyberDogはUbuntuのセキュアな設計からもメリットを享受しています。2004年から、Ubuntuはエンタープライズグレードの、業界をリードするセキュリティ対策を基盤としています。ツールチェーンやパッケージスイートから、業界標準の認証更新メカニズムまで、CanonicalはUbuntuの安全性と信頼性が最先端のものとなるように取り組みを続けています。CyberDogは4足ロボットを提供するためのこの安定したインフラストラクチャを活用し、機器のライフサイクルを通してセキュリティ更新を受け取ります。

将来の更なる発展に向けての協力

Xiaomiは1,000台のCyberDogユニットを提供し、エンジニアやロボット愛好家に無限の可能性を探るよう呼び掛けています。また、同社は世界中の開発者と進展や成果を常時共有するために、「Xiaomi Open Source Community」を立ち上げます。

このような取り組みが4足ロボットの普及に貢献します。世界中のスタートアップ企業、研究機関、大学は、この機器を効率的に展開できる方法や場所について検討しています。CyberDogの手頃な価格とオープンソースの特性は、新しい用途の研究を加速させています。すでに、4足ロボットが地雷を探索したり、自然災害時に初期対応者を支援したりするケースが確認されています。また、建設業や、地形によって操縦が困難な場所での工業検査にも役立っています。このような連携による取り組みによって、毎日数多くの用途が見つかっています。

一方、Ubuntuは、ROSなどのオープンソースツールやライブラリの充実したエコシステムを活用し、この開発プロセスを促進しています。Ubuntuの選択により、XiaomiはCyberDogに比類のない開発環境を与えました。業界がこの基盤に何を構築していくのか、非常に楽しみです。

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