MicroCephを使用したエッジストレージ

by Canonical on 8 February 2024

MicroCephならどこでも手軽にエッジストレージ

写真:Jandira SonnendeckUnsplashより

データはあらゆる場所に存在します。大規模な集中型のデータセンターだけでなく、小売店、リモートオフィスや支店、撮影現場のような出先、そして自動車の中にも。エッジストレージの目的は、ローカル処理、ネットワークの遅い場所では不可能なコンテンツでの共同作業、そして取り込み(ローカルで作成されたコンテンツをキャプチャして保護し、他のシステムで利用できるようにすること)です。

すべてのシナリオには2つの共通点があります。生成されるデータが重要で、その場所の帯域幅が限られていることです。

従来、このような場合にはシングルボードコンピューターを使用していましたが、時代の変化とともにデータの重要性が高まり、性能の向上と冗長性が求められるようになりました。この新しいニーズに応えるのがエッジストレージです。

エッジストレージソリューションでは、データを安全に保存し、データが作成された場所で効率的に処理します。データを一括処理する場所に送る必要はありません。これにより遅延や帯域幅の制限に関係なく、安全でパフォーマンスの高い処理が可能になります。

今回のブログ記事では、エッジストレージソリューションを使用するメリットを考察し、MicroCephでストレージクラスターを構築する方法を説明します。

エッジストレージによるローカルでの管理

写真:Alexander KovacsUnsplashより

小売店などの一部のエッジ環境では、集中リポジトリに結果を送信する前に、その場で販売データや在庫データの初期処理と分析を実行する方が効率的です。このような鮮度重視のデータは無数の場所で生成され、他の処理の入力情報として使用されます。

もうひとつの用途は自動運転車です。自動運転車は1日あたり最大6TBのデータを生成します。このデータは意思決定や自動運転アルゴリズムの最適化に使用されるため、ローカルでリアルタイム処理し、しかもデータの完全性を維持する必要があります。

これには高性能で冗長性のあるストレージが必要であり、従来のシングルボードのコンピューターシステムでは間に合いません。この性能と冗長性を提供するのが、Cephのような拡張性を備えたストレージソリューションです。複数のノードがあるためデータの複数のコピーが保存され、1つのノードやディスクが故障してもデータが失われません。Cephのスケールアウトアーキテクチャでは、ノードを追加するとパフォーマンスと容量を拡大できます。

データ処理の分散により、企業のネットワークやデータセンターの負担が軽くなり、結果を取得する際の遅延も短縮されます。

エッジストレージによるコンテンツの保護

真:Chris MurrayUnsplashより

画像や動画などのコンテンツは、ファイルのサイズが大きいためリモートでのコラボレーションに限度があります。したがって、データを一時的にローカルに保存する必要があります。たとえば、平均的なテレビ番組1話分の生映像データは100TBにものぼります。

さらに、遠隔地の撮影現場にはコンテンツを集中データストアに安全に送るネットワーク接続がない場合もあり、ローカルに安全に保存してから後で処理する必要があります。このような状況でデータ損失が発生すれば、制作会社に大きな損害が生じる可能性があります。

フルディスク暗号化を使用すれば、ディスクやノードが失われてもデータは漏洩しないので安心です。さまざまなストレージプロトコルに対応するCephXの強力なクライアント認証では、承認された関係者のみがクラスターに保存されているデータにアクセスできます。

エッジストレージがシンプルに

エッジストレージシステムは、継続的なメンテナンスコストが少なく、合理的でスムーズに運用できる必要があります。場合によっては、遠隔地やオフラインの場所にあり、ストレージ担当者を配備できないためです。標準的なCephクラスターをエッジでの導入や運用が難しいかもしれませんが、MicroCephなら簡単です。

Canonicalは、専門家がいなくても必要な場所で信頼性と回復力の高いストレージを利用できるよう、MicroCephを設計しました。MicroCephは拡張性の高いsnapベースのソリューションであり、たった3つのノードで冗長性と高可用性を提供するだけでなく、数ペタバイトまで拡張できます。MicroCephは、すべての依存ファイルとともにコンテナ化されており、基盤となるホストから完全にサンドボックスで実行されるため、セキュリティリスクが小さくなります。ソフトウェア更新は手間がかからず、実行中のCephクラスターの運用要件に配慮しているため中断も発生しません。

MicroCephは、ブロック、ファイル、オブジェクトのすべてのデータアクセスプロトコルをサポートし、フルディスク暗号化で運用されるため、ハードウェアの損失を心配する必要はありません。

誰でも手軽に使えるCeph

MicroCephをぜひお試しください。わずかなコマンドを使い、短時間でCephクラスターを構築して運用できます。まず以下のコマンドを使用してMicroCeph snapをインストールし、3つのループバックベースのOSDを持つシングルノードのCephクラスターを作成します。この構成は実運用環境には推奨されませんが、MicroCephを手軽に体験できます。

sudo snap install microceph --channel quincy/edge

次に、最初のノードからクラスターを起動します。

sudo microceph cluster bootstrap

次に、OSDとして使用するディスクを追加します。

sudo microceph disk add loop,4G,3

クラスターのステータスを確認します。

microceph.ceph status
microceph.ceph osd status

詳細情報

MicroCephの詳細は、snapcraftのページをご覧ください。

その他のリソース

ニュースレターのサインアップ

Ubuntuニュースレターの配信登録

お客様が購読登録を行われる場合、以下の条件に同意されたことになります。Canonicalのプライバシーに関するお知らせ個人情報保護ポリシー

関連記事

CentOSのサポート終了(EOL)– Cephストレージへの影響は?

暗闇から光の中へ、新たな前進 2020年に、CentOS ProjectはCentOS Streamのみに注力することを発表しました。つまりCentOS 7がRed Hat Enterprise Linuxと共通性を持つ最後のリリースです。2024年6月30日のCentOS 7のサポート終了(EOL)により、OSのセキュリティ更新、パッチ、新機能のリリースがなくなります。 このバージョンのCentOSにCephをデプロイすると、将来の困難は見えています。EOLの課題を切り抜ける方法はいくつかありますが、それぞれに短所があります。 リスク 何もしなければ、デプロイメントが古くなるにつれてCephの新しいバージョンにアップグレードする道がなくなり、新しい機能を得られなくなりま […]

クラウドストレージのセキュリティに関するベストプラクティス

Cephのセキュリティ機能でデータを保護 クラウドストレージシステムにデータを安全に保存するには データはあらゆる組織にとって貴重な資産であり、紛失や漏洩は大惨事になりかねません。システム障害を防げなければ、業務データを失い、営業不能に陥って経営破綻に至る可能性もあります。機密データが漏洩すれば、企業は評判を落とすだけでなく巨額の罰金を科されます。 今回のブログ記事では、こうしたリスクに注目するとともにCephのセキュリティ機能でリスクを軽減する方法を説明します。まず、最も一般的なデータ侵害の例を挙げましょう。 物理的な盗難/輸送 ストレージ関連のハードウェア、ディスク、またはストレージシステム全体が失われると、機密情報が漏洩する可能性があります。たとえば従来の盗難です。 […]

Cephを使用して次の点で将来に備える方法

オープンソースのCephを自社のIT環境でクラウドストレージとして活用する方法 データストレージ業界は、劇的な進歩を遂げてきました。コンピューターのプログラムを紙のパンチカードに記録したり、1台のハードディスクドライブをフォークリフトで運んでいた時代もありました。現在では1テラバイト(TB)のデータが切手よりも小さなパッケージに収まります。 では、このような時代の移り変わりは、現代のデータセンターにとって何を意味するのでしょうか。現代の組織はデジタルファーストであり、データの量は膨大です。企業にとってデータは資産であり、費用対効果の高い方法で安全かつセキュアに保管する必要があることはもはや常識です。 このガイドの内容: 予算内でストレージを拡張するうえで企業が直面する課題 […]


© 2024 Canonical Ltd. Ubuntu および Canonical は、Canonical Ltd の登録商標です。