Ubuntu 20.04に関するアンケート調査結果

by cmoullec on 3 June 2020

2019年12月、CanonicalはUbuntu 20.04 LTS(リリースされました!)に何を最も望むかというアンケート調査を実施しました。21,862人が参加してくださり、その回答は意思決定の過程で活用させていただきました。時間を割いて回答してくださった皆様に心より御礼を申し上げます。回答の締め切り後、結果を各担当エンジニアリングチームに伝え、それによって20.04に関するさまざまな決定事項を承認または却下しました。今回得られた調査結果は、今後もコミュニティの皆様のご意見として反映いたします。このブログでは、主な傾向、重要な発見、そしてCanonicalがそれらをどのようにUbuntuに反映させたか、または今後反映させていくかを解説します。

重要な発見

大まかな結果の抽出には、Monkey Learnの感情分析、キーワード抽出、キーワード分類機能を使用しました。ただし、質問は自由回答式だったため、さらに詳しく読み込んで理解に努めました。以下は、最も顕著だった所見と、それに対してCanonicalがどう対応したか、または今後する予定かを列挙しています。 

GNOME

予想どおり、GNOMEが論議の的となりました。GNOMEとは、オープンソースのグラフィカルユーザーインターフェイス(GUI)であり、さまざまなLinuxディストリビューションで使用されるデスクトップアプリケーション群です。Canonicalでは2年前に、自社開発のUnityデスクトップ環境からGNOME 3.28に切り替えました。この変更はコミュニティ内で賛否両論でしたが、採用となった理由は、結局多くの人がすでにGNOMEを使用していて、その環境を気に入っていたということでした。当社のUnityにおける取り組みは、革新ではなく断片化と捉えられていました。

アンケート調査で広く見られた意見としては、ユーザーにとっての使いやすさの点から、20.04に対応したGNOMEの更新(これはリリースごとに最新状態になっているという意味だと解釈しました)と改善(継続的なアップストリームへのコントリビューションを通じて)が必要というものでした。 デスクトップ環境に関する回答の約30%がUnityの復活を求めていました。一方、約80%(中にはGNOMEに投資するCanonicalの決定を認めつつ、Unityを希望する人もいました)は、GNOMEの改善、または一貫性を求めていました。

Ubuntu 20.04には、最新版のGNOME 3.36が搭載されています。このリリースの特徴としては、シェルテーマの改善、新しいロック画面、「Do Not Disturb」トグル機能、設定パネルの改善などがあります。

人気アプリケーションに対する要望

「Ubuntuに何があれば便利だと思いますか?」という質問に対する回答は、非常にばらつきました。しかし、最も興味深いコメントや情報が得られたのもこの質問でした。回答を読んでみると、多くの人が人気のあるプロプライエタリ・アプリケーションを望んでいることが明らになりました。

Adobe Photoshop(Illustrator®、Acrobat、Creative Cloud®)には、100件以上の要望がありました。次にMathworksとAutodeskのツールが続き、Microsoft Officeアプリケーションについては言及や要望が数百件にのぼりました。実際、こうしたアプリケーションは多くの回答者にとって「Windowsに固執する」主な理由として挙げられました。また、それほど多くはないものの、Lightroom、Steam、Instagramなどの人気アプリも言及されていました。

調査全体の規模と比較すればこの数は小さなもので、比較対象がないためその重要性を性格に判断するのは難しいと言えます。しかし、このようなツールやアプリケーションのLinuxへの導入には継続的に取り組んでいます。Linuxを長くお使いの方ならSpotify、Skype、Slack、VSCodeなど、大型のクローズドソースアプリが過去数年間に次々と追加されていることをご存じでしょう。Snapチームの取り組みはsnapcraft.ioからご覧いただけます。

サポートとマネージド

回答の中で「サポート」と「マネージド」という言葉が何度も出てきました。過去2年間でCanonicalは、KubernetesとOpenStackという、Ubuntu Desktopとともに集中的に開発され、Ubuntu Serverで実行されている2つの技術に対応するマネージドサービスとサポートを追加してきました。4月前半には新製品としてCanonicalのマネージドアプリをリリースしました。これは、あらゆるコンフォーマントKubernetes上で10種類の主要クラウドネイティブアプリを使用するためのフルマネージドサービスです。詳細については、マネージドアプリのビジネスメリットに関するウェビナー(英語)をご覧ください。

ゲーム

1,280人の回答者が、プレイ、ストリーミング、開発など、ゲーム関連のことを回答しました。ゲームは技術成長の著しい分野であり、回答者にとってのエクスペリエンスがますます改善されるはずの分野として認識されています。一部の回答者は、これが主な原因でUbuntuを利用していないと述べていました。多くの回答者がゲーマー向けのUbuntuのサポートや改善を望んでいました。

20.04では、Feral InteractiveのGameModeパフォーマンスツールがデフォルトでインストールされています。GameModeはLinuxデーモンで、ゲームがより多くのCPUパワー、I/O優先、その他の最適化を要求することを可能にします。これによりLinuxゲームがよりスムーズに動くようになり、Linuxゲーマーの体験が改善されます。また、しばらく前からになりますが、Nvidiaのプロプライエタリ・ドライバーの更新もLTSに追加されました。20.04でも同様で、かつドライバーの表示と選択に関するUIが改善されます。

ZFS

ZFSとは、標準的なファイルシステムよりも多くの機能と面白い特徴を備えた高度なファイルシステムです。これについては226件の言及やコメントが寄せられました。コメントした全員がCanonicalの方向性に賛同し、ZFSのサポートや開発が自分たちにとって有益だと述べました。

20.04ではZFSを最新版にアップグレードし、性能の向上に加え、システムを手作業で管理しているシステム管理者向けの暗号化サポートオプションを追加しました。また、基本的な実験的統合と一貫性のある機能のサポートも実装しました。zsysにより、ソフトウェアのインストール/アップグレード/削除時のシステム状態と、スケジュールに沿ったユーザー状態の自動保存を実現しています。これにより、起動時に任意のシステム状態を復元し、時間を遡って信頼性の高い安定したオペレーティングシステムを取り戻すことができます。

Snap

Canonicalの感情分析通して、Snapに関する非常に面白いことがわかりました。否定的な意見、中立的な意見、肯定的な意見がそれぞれ30.1%、33.5%、36.3%とほぼ均等に分かれていたのです。ご存じない方のために書くと、SnapとはCanonicalが開発したソフトウェアデプロイメント/パッケージ管理システムであり、パッケージソフトを簡単に更新することができます。Linuxディストリビューション、クラウド、IoTデバイス、デスクトップを問わず、セキュアに動作するよう設計されています。Linux用のアプリストアであるSnapstoreでは、どんなアプリケーションでもクリックまたはコマンド1つでインストールできます。

今回の調査で圧倒的だった要望は「More」、つまり「もっと多く」のSnapが欲しいというものでした。一方、否定的なコメントの大半はデスクトップアプリとSnapの性能に関してでした。20.04では引き続き性能の改善に努めています。特に起動時間全体的なパフォーマンス自身での開発全体的な改善には、以前から継続的に取り組んでいます。

コミュニティの予想

アンケート調査の中には、「Canonicalが次に何をすべきだと思いますか?」「最大の成長分野はどこだと思いますか?」など、回答者の予想を尋ねる質問が多くありました。以下に際立った回答をご紹介します。

AI/ML

人工知能(AI)と機械学習(ML)が次の時代の主役になるという予想が圧倒的に多い回答でした。何千人もの回答者の中で、「今後2年間で最も技術的に成長する分野は何だと思いますか?」という質問に対し、約50%が明示的にAI/MLを挙げました。「わからない」や「-」という回答も多かったので正確な数字を出すことは困難ですが、明示的にAI/MLを挙げなかった回答も、詳しく読むとその成長を暗示していました。

Canonicalは、KubeflowをKubernetesディストリビューションの両方(MicroK8sCharmed Kubernetes)でネイティブに配布することで、AIに対応しています。Kubeflowは、AI/MLワークロードでクラウドアセット(パブリックまたはオンプレミス)を活用しやすくするプラットフォームであり、コミュニティ主導型のプロジェクトとしてこのほど1.0リリースを行いました。20.04のライフタイムを通して、AI/ML技術がUbuntuユーザーに届くよう、さらなる取り組みを期待してください。

IoT

AIと同様、IoT(モノのインターネット)に関する予想も、将来に関する質問への回答の約25%で登場しました。しかもこれにはロボティクス、3Dプリント、特定の「スマート」IoTデバイスは含まれていません。

20.04のリリースに続いて、Ubuntu Core 20(UC20)が発表されます。Ubuntu Coreは、最小限、かつデフォルトでセキュアな組み込みシステム向けのUbuntuであり、IoTに対するCanonicalの答えなのです。IoT関連の回答の大半は、何らかのデバイスやアプライアンスが未来において重要な存在になることを予想しています。私たちも同感です。Canonicalは、IoTロボティクス全般におけるUbuntuエクスペリエンスの向上に継続的に取り組んでいきます。

私たちはまた、誰もがIoTに関わり、メリットを得られるよう尽力しています。Ubuntuサーバーに含まれる改善はすべてIoT開発者に有益なものであり、Canonicalは、メーカー、アマチュア開発者、プロの開発者の誰もがUbuntuを使って快適に開発できるよう、Raspberry PiとUbuntuへの取り組みと認証を継続して行っています。

クラウドX

クラウド「何とか」という言葉も、今後の技術的成長分野に関する回答に多く見られました。クラウドゲーム、クラウドサービス、クラウドストレージ、クラウド統合、クラウドアプリケーション、ハイブリッドクラウドなどなど。この回答は、Kubernetesクラウドツーエッジ処理、5G、一般的な高速処理などのトピックを挙げたAI関連の回答と緊密に結びついています。

これらの回答はすべて、クラウドコンピューティングの活用によってさらに多くのことが可能になると予想しています。Canonicalは、Ubuntuがクラウドの中で使われているよう注力しています。最近発表したセキュリティとコンプライアンス機能を向上させたUbuntu Proもその一環です。今回のようなユーザー調査がその分野の取り組みを裏付けているのはうれしいことです。

その他の興味深い結果 

今回のアンケート調査には、どのような方が参加しているのかを知るための付随的な質問がいくつか含まれていました。その以外にも、私たちが見逃しているかもしれない特徴やフィードバックを特定するための質問もありました。

回答者層

今回の調査では、不要にプライバシーに立ち入ることなく4つの質問を通して回答者の把握が試みられました。「どのくらいUbuntuが好きですか?」という質問は全員に尋ねました。回答者21,872人のうち約96%が中立または肯定的な回答をしていることから、調査に参加しているのがUbuntuユーザーであることは明らかでした。 

次に、何らかの形態のUbuntuを使用しているという回答者に対し、Ubuntu Desktopを使用しているかどうかを尋ねました。ご覧のように回答者の85.5%が「はい」と回答しています。他の回答者はUbuntu ServerまたはUbuntu Coreを使用しています。

しかし面白いことに、Desktopを使用しているという回答者に「今後2年間でUbuntu Desktopに何を望みますか?」と尋ねたところ、最も多い回答は以下のように明らかでした。

次に、同じ回答者に対し、業務で使用している主なOSを尋ねました。興味深いことに、回答者の大部分はUbuntuユーザーであるにもかかわらず、WindowsをメインOSとして使用していました。Ubuntu Desktopを使用しているという回答者数を考慮すると、Ubuntu ServerまたはCoreだけを使用している人は、メインのOSとしてWindowsまたはMac OSを使用していると考えられます。

調査の終盤で、最後まで辛抱強く回答してくださった方々に職業を尋ねました。意外なことに、回答者の16.9%、すなわち約3,416人は、金融関係の仕事をするUbuntuユーザーでした。

回答者の地理性

Canonicalでは、Ubuntuのユーザーが世界中にいると公言してきました。たまにはそう宣言することは大事なことです。最後のページまで到達した21,291人のうち、欧州の人が51.1%、北米が22.4%、アジアが12.1%、残りがその他の地域でした。この分布はほぼ予想どおりであり、調査が英語のみで実施されたことを考えれば妥当な結果と言えます。

Amazonアプリの削除 

ほとんど使われていないAmazonアプリを削除することは、かなり前から20.04の計画に入っていました。直近のリリースでは、新しいタブで地域版のAmazonが開くショートカットだけでした。大半の回答者はAmazonアプリについて言及していませんでしたが、指摘した熱心な回答者もいました。このアプリが好きなある回答者さん、ご心配なく。ウェブブラウザを使えば問題なくAmazonを読み込んでくれるはずです。

お気に入りのFlavour

これは複数回答可の質問だったので、ユーザーは好きなFlavourをいくつでも選択できました。したがってパーセンテージの合計は100ではありませんが、人気の程度をよく示していると思います。「Official Ubuntu」を使用している人が最も多くて85.4%、続いてKubuntu、Xubuntu、Ubuntu MATEが2位を争っています。

結論

このアンケート調査の目的は、私たちが見逃しているかもしれない特徴やトレンドを明確にすることでした。うれしいことに、得られた情報の多くは計画していたことと一致していました。いくつかのトピックについては意見の衝突があることは理解していましたが、私たちがおおよそ正しい側にいると確認できたのは収穫でした。技術界の将来に関する予想についてはユーザーの意見がほぼ一致しており、Ubuntuユーザーは今後も多様で、分散し、機敏な反応を示すと予想されます。IoTにおけるUbuntuの利用に対する意識が低いなど、予想外の結果もいくつかありました。それについては、早急に対処したいと思います。力を入れるべき開発やプロモーションの分野が明確になりました。調査の結果は今後、当社の意思決定に役立てていきます。参加してくださった皆様、ご意見をありがとうございました!

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