Canonical、NVIDIA Jetson Orin向けのUbuntuおよびROSのリリースで
by Canonical on 26 December 2023
Canonical、NVIDIA Jetson Orin向けのUbuntuおよびROSのリリースで、安定したロボティクス/AI開発を実現
ソフトウェアとハードウェアの連携は、ロボティクスと人工知能(AI)の進歩において極めて重要です。CanonicalとNVIDIAのコラボレーションは、ソフトウェアとハードウェアの相乗効果を生み出します。そしてNVIDIA Jetson OrinハードウェアのユーザーにUbuntuの汎用性と安定性を約束します。
この記事では、コラボレーションの成果としてNVIDIA Jetson Orinファミリー、最近発表されたIsaac ROS、そして早期アクセスパートナーを対象としたNVIDIA Jetson Orinベースのシステムに最適化したUbuntuイメージについて解説します。
NVIDIA Jetson Orin上のUbuntuとROS
最適化されたUbuntuカーネルとユーザー空間がNVIDIA Jetson Orinで利用可能になることは、ロボティクスとAIの分野において極めて重要です。Ubuntuは約10年前から、ROSを使用したソリューションの開発に多く使用されてきました。最先端のAI/ロボティクスプラットフォームであるNVIDIA Jetsonは、まもなくUbuntuの適応性と開発環境を利用できるようになります。NVIDIA JetPackはしばらく前からUbuntuのパッケージをベースとして構築されていますが、カーネルのセキュリティ更新、Ubuntu認定、実環境のデプロイに対するサポートはありませんでした。
まもなくNVIDIA Jetson Orinモジュールの全ラインナップがUbuntuでサポートされ、Ubuntu 22.04では長期サポート(LTS)とセキュリティパッチが提供されます。Canonicalは、堅牢性と安定性を確保するため、CVEのパッチ適用を含むカーネルの定期的な更新の回帰テストと検証に取り組んでいます。カーネルとオペレーティングシステムを常に最新の状態に保つことで、巧妙化する攻撃から実環境を守ることができます。
ロボット技術者(ファンと企業の両方を含む)の視点から見ると、今回の統合は単にUbuntuをNVIDIAプラットフォームで実行できるというだけではありません。ROSの豊かなエコシステムが最適化され、NVIDIAがコミュニティに提供するハードウェアアクセラレーションを利用できることでもあります。これによりロボット技術者は、実世界のシナリオで最高のパフォーマンスと効率を得られます。
開発者は、ROSに最適化された検証済みのオペレーティングシステムを使用することで、実際のアプリケーションの開発に集中できます。
ROSコミュニティにとってIsaac ROSが一段と進歩
NVIDIA Isaacロボティクスプラットフォームは、ロボティクスにおけるAIの進歩を目的として設計されています。最新のIsaac ROSアップデートにより、ROS開発者はNVIDIAのAI認識機能を活用しやすくなりました。また、Isaac Simの最新リリースには、実世界に導入する前に、仮想世界でAIロボットを容易に開発、テスト、トレーニングできる新機能が揃っています。
NVIDIAのロボティクスソフトウェアフレームワークであるIsaac ROSは、最初の一般提供(GA)リリースで実稼働品質のツールへと成長し、NVIDIA Jetson Orinで使用できるようになりました。中でも際立った特徴が、ROS 2 Humbleパッケージの明確なサポートです。NVIDIAはビルドファームを確立し、Jetson向けにROS 2 Humbleパッケージをコンパイルします。これにより、ソースからコンパイルする手間が省け、開発が合理化されます。
さらに重要な利点は、Isaac ROSからROS 1への最適なブリッジがあることです。これにより、ROSアプリケーションでIsaac ROSの強力な機能を使用することができ、ROSバージョン間の切り替えが容易になります。バージョン間のギャップへの対処を重視している点は、Stereolabs ZEDカメラの統合によってさらに強調されています。
最後に、Isaac ROSツールキットの注目すべき追加機能はCenterpose 3Dポーズ推定DNNです。NVIDIA Isaac Transport for ROS(NITROS)アクセラレーションにより、オブジェクトの3Dポーズを推定する際の処理速度と精度が向上することは、正確なオブジェクトの向きと位置決めを必要とするロボティクスアプリケーションの開発者にとって大きな利点です。
NVIDIA Jetson Orinに最適化したUbuntuイメージへの早期アクセス
Xavier世代までのJetsonには認定済みのUbuntuソリューションがありませんでした。Jetson Orinファミリーにはあります。今年の初めに、NVIDIAとCanonicalは、NVIDIA IGX OrinとDRIVEプラットフォームの認定に向けた協力体制を発表しました。
これは幅広いJetson Orinファミリーに利点をもたらし、NVIDIA Jetson AGX Orin専用のUbuntuイメージが今四半期後半に早期アクセスパートナーに提供されます。
このような新しいUbuntuイメージは、さらにハイエンドの産業用/車載用カーネルと同じく、NVIDIAに最適化したカーネルを利用しています。今後もNVIDIAユーザー空間のコンテンツがUbuntuに統合され、これらのイメージは将来のカスタマーソリューションの基盤となるでしょう。Orin NanoやOrin NXなど、より広範なJetson Orinファミリーに対するUbuntuサポートにも対応し、個別のユースケースとニーズに基づいた選択肢を提供します。
Canonicalが提供するNVIDIA Jetson AGX Orin開発キット用の早期Ubuntuイメージをご希望の方は、お問い合わせください。
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