車の所有や移動に関するトレンドの変化が自動車業界の未来に与える影響

by Canonical on 7 February 2023

ここ数年、自動車の所有における大きな変化が自動車業界の未来に影響を与えています。マイカーの所有からカーシェアアプリへと、車の利用方法は根本から変化しています。このような変化の理由を検討し、それがどのように移動のトレンドを作っているかを考えてみましょう。

コストの上昇

平均的な新車の価格は48,000ドル以上。どんな年齢の人にも新車への投資は大変です。この高コストには複数の理由があります。 

新型コロナウイルス感染症は、バスや地下鉄などの公共交通機関から人々を遠ざけ、車に対する需要を高めました。同時に業界はマイクロチップ不足に直面しています。つまり車の生産台数が減り、在庫レベルが下がります。供給より需要が大きければ価格は上がります。

しかし、新車や中古車の購入費用が高いことが、自動車の所有をためらわせる唯一の経済的理由ではありません。世界的な経済情勢により、大半の国で燃料の値段が高騰しています。ガソリンや軽油だけでなく、電気自動車(EV)の電気代も値上がりしています。

そのうえ、車を所有すれば保険や駐車場代などの費用も生じます。米国だけでも今年、保険料は2021年と比べて4.9%上昇しました。保険の平均コストは、完全補償で年間1,771ドルです。多くの国がインフレに見舞われている現在、車を買うことも維持することさえも難しいのです。一方、新しい移動のトレンドやソリューションの登場により、全員が車を買う必要はなくなりました。 

移動サービス

多くの都市住民にとって、ほとんどの時間、駐車場に置くだけの車を所有するのは経済的に意味がありません。自動車がそのライフサイクル全体で環境に与える影響を考え、車を買うのをやめる人も増えています。

在宅勤務が一般的になるにつれ、車を持つことを憧れではなく面倒に思う人もいます。同時に、移動サービスの利用は着実に伸びています。 

誰かと車を共有したり、カーシェアサービスを利用したり、カープールを申し込んだり、選択肢はいくらでもあります。そのうえ配車サービスアプリが大流行し、Uber、Lyft、Grabなど複数の企業が市場の優位に立ち、自動車業界の未来を作っています。

顧客やユーザーが移動の方法を変える一方、OEMは車を作る方法を変えようとしています。共有するための車は、リモートで、あるいはスマホアプリで開錠できる必要があります。また、フリート管理者が具体的なユーザーやニーズに最適な車を提案できるよう、移動範囲や現在地などの情報を提供する必要があります。

これにより、OEM管理型保険、フリート管理、共有車両のメンテナンスサービスなど、他のビジネスのチャンスも生じます。

自動運転技術が新しいビジネスモデルをさらに促進

自動運転(AD)技術は、移動サービスに貢献すると期待されています。特定の条件下で自動走行する車が増えれば、そのような車のユーザーは、たとえば渋滞の中で時間を有効に活用できます。 

大半の人はすでに車の中で仕事の電話を受けています。しかし近い将来、車がもっと生産的な場所になり、ビデオ会議や高度な共同作業もできるかもしれません。娯楽に関して言えば、自動運転車ならテレビ、映画、さらにはビデオゲームまで楽しめるようになるでしょう。そうです。車が勝手に走ってくれるなら「映画を観ながらまったり」も可能なのです。 

自動車メーカーがコンテンツやコネクテッドサービスを提供する技術企業になる日も近いかもしれません。共有サブスクリプションが普及すれば、新しいビジネスが生まれるだけでなく、前には特定のOEMブランドや車全般に興味のなかった新しい顧客も惹きつける可能性があります。

たとえば、移動サービスを利用すれば、好きなストリーミングサービスの限定コンテンツにアクセスできるかもしれません。あるいは、好きなコーヒーチェーンに立ち寄れば10%オフのクーポンが使えると車が教えてくれるかも。実現は意外に近いかもしれません。

自動車業界の未来はソフトウェア定義

上記の変化はすべてソフトウェアによって実現します。自動車業界の成功は、今やソフトウェアにおける革新と投資に結びついていると言えます。車の所有の変化は車の製造の変化も意味しているのです。部品のコストが上がり、車に含まれる機能やサービスの数が急増している現在、ソフトウェアの変革こそ成功のポイントです。

機能の追加に対応するため、電気/電子(E/E)アーキテクチャはますます複雑化しています。OEMは現在、部品やプロセスの拡張や管理を容易にするため、このアーキテクチャの簡素化に取り組んでいます。これには、レイヤを高度に抽象化するほか、未来の車のハードウェア部品をさらに統合する必要があります。

企業がコストを最適化し、多くのソフトウェア技術者を確保するには、オープンソースソフトウェアへの投資が必要です。そもそもオープンソースでは、コード自体が透明性を持ってチェックを受けるため、セキュリティが中立的かつ外部的に検証されます。一方、必要があればカスタマイズも可能です。

おそらく自動車メーカーは、大手ソフトウェア企業と提携してソフトウェア定義車両の課題に挑むことになるでしょう。しかし安全性とサイバーセキュリティ上の制約を考慮し、自社の車や関連サービスが長期的にサポートされるよう、OEMは賢くパートナーを選ぶ必要があります。ソフトウェア定義の新しいビジネスモデルを最大限に活用するには、むしろそれが不可欠です。 

今後の動向

自動車業界は、個人による車の所有から、車やブランドが関与する移動サービスの実用性や付加価値へと重点をシフトすると思われます。

ここから新しいビジネスモデルが生まれ、車のライフサイクル全体にかかわってくるでしょう。変化の主役となるのはソフトウェアです。企業がゼロからソフトウェアを開発しようとし、既存のソフトウェアに追いつくまでに多額を投資する話をよく聞きます。これは最善の方法とは言えません。

OEMや自動車メーカーが迅速な行動で新しいビジネスチャンスを生かすには、オープンソースソフトウェアを活用する必要があります。ゼロから作る必要はないのです。

自動車メーカーには信頼できるベンダーが必要です。Canonicalは長期サポートのコンセプトを導入しました。定期的かつ確実にUbuntuのリリースとセキュリティパッチを配信します。OEMやティア1の企業はCanonicalのツールやサポートを土台として、ソフトウェアを重視する方向への自動車業界の移行を促進できます。

お問い合わせ

Canonicalの自動車に関する取り組みについては、ウェブサイトでご覧ください。

ニュースレターのサインアップ

Ubuntuニュースレターの配信登録

お客様が購読登録を行われる場合、以下の条件に同意されたことになります。Canonicalのプライバシーに関するお知らせ個人情報保護ポリシー

関連記事

ソフトウェア定義型自動車の謎を解く

ソフトウェア定義:業界のUターン ソフトウェア定義型自動車(SDV)の登場により、Connected(コネクテッド)、Autonomous(自動運転)、Shared(カーシェアリング)、Electric(電気自動車)の普及が急速に進んでいます。この4つはあまりに顕著なため、すでに業界では「CASE」という頭字語で呼ばれています。 消費者による期待の高まりもSDV化に拍車をかけ、車載ハードウェアとソフトウェアの両方に難題を課しています。CASEのトレンドと消費者のニーズに対応するには、従来の自動車の構造を見直し、設計を再考する必要があります。新しい構造には、多くの要件の中でも特にアップグレード、パフォーマンス、セキュリティが求められます。 これは自動車業界にとって大きな変化 […]

未来のAIがもたらすもの

Artificial Intelligence Appreciation Dayに注目すべき8つのトレンド 米国で7月16日は「Artificial Intelligence Appreciation Day」(人工知能感謝の日)です。20世紀にSF小説でよく扱われたアンドロイドなどのテーマや発明は、今や科学的にほぼ現実のものとなりました。1950年代、人工知能はアルゴリズム開発などの大きな成功と、計算能力の制約による大きな失敗の両方を経験しました。そして今日、AIは今年最大のトピックとなりそうです。ChatGPTは1週間足らずで10億ユーザーを達成し、企業はAIへの投資を増額しています。では、AIの未来はどうなるのでしょう?以下のトレンドが今後を垣間見せてくれます。 A […]

Canonical プレゼンツ:Dell Technologies Forum 2023 – イノベーションと成長の力を解放する

Dell Technologies Forum 2023は、イノベーションと組織の成長を目指すビジネスリーダーやスペシャリストに向けた、デル・テクノロジーズの日本における最大のイベントです。今年も会場とオンラインで同時に開催され、最新のITトレンドや最先端テクノロジーのご紹介のほか、実際に変革を成し遂げた企業の事例、様々なセッションをご用意しています。 Canonicalの参加 Canonicalはパートナーとして、デルプラットフォームとの共同ソリューションの成功事例をいくつか紹介します。さらに、最新のAIプラットフォームソリューションを展示します。信頼できるAI/MLオープンソースプラットフォーム、Ubuntuは、開発者からエッジまで、AIの構想を支援するプラットフォー […]


© 2023 Canonical Ltd. Ubuntu および Canonical は、Canonical Ltd の登録商標です。