Canonical、24.04 LTS Noble Numbatを公開

by Canonical on 29 April 2024

Canonicalの10番目のLTS(長期サポート)リリースは、パフォーマンスエンジニアリング、企業セキュリティ、開発における使い勝手の点で新しい基準を確立します。

ロンドン、2024425

Canonicalは本日、Ubuntu 24.04 LTS(コードネーム「Noble Numbat」)のリリースを発表しました。https://ubuntu.com/downloadからダウンロードとインストールが可能です。

Ubuntu 24.04 LTSは、直近3つの中間リリースの改良、さらに世界中のオープンソース開発者のコントリビューションを受け、安全で最適化された先進的なプラットフォームに仕上がりました。

Canonicalの最高経営責任者(CEO)であるMark Shuttleworthは次のように述べています。「Ubuntu 24.04 LTSは、パフォーマンスエンジニアリングとコンフィデンシャルコンピューティングの点で大きく前進し、最低12年間のサポートを保証する企業グレードのイノベーションプラットフォームです。開発者の皆様にTCK認証Java、LTS for .NET、最新のRustツールチェーンをお知らせできてうれしく思います。」

すぐに使えるパフォーマンスエンジニアリングツール

Canonicalは、Ubuntuのエコシステム全体の品質とパフォーマンスの向上に取り組んでいます。

Ubuntu 24.04 LTSは、syscall性能の改善、ppc64elでのNested KVMのサポート、新しいbcachefsファイルシステムへのアクセスを特長とする最新のLinux 6.8カーネルを採用しました。アップストリームでの改善に加え、低レイテンシカーネルの機能をデフォルトカーネルに統合し、カーネルのタスクスケジューリング遅延を短縮しています。

またUbuntu 24.04 LTSでは、すべての64ビットアーキテクチャで、デフォルトでフレームポインタが有効となるため、パフォーマンスエンジニアは、トラブルシューティングや最適化の目的でシステムのプロファイリングを行う際、正確で完全なフレームグラフにすぐにアクセスできます。

Intelのコンピューターパフォーマンスエキスパート&フェローであるBrendan Gregg氏は次のように述べています。「フレームポインタにより完全なCPUプロファイリングとオフCPUプロファイリングが可能となり、その利点は比較的小さなパフォーマンスの低下を大きく上回ります。デフォルトでのフレームポインタの有効化はパフォーマンスエンジニアリングとデフォルトの開発機能における大きな進歩です。」bpftraceによるトレースはUbuntu 24.04 LTSで標準機能となり、既存のプロファイリングツールとともに、サイト信頼性エンジニアによる必須リソースへの迅速なアクセスを助けます。

ワークロードアクセラレータの統合もパフォーマンスをさらに改善します。CanonicalとIntelは協力し、Intel® QuickAssist Technology(Intel® QAT)を初めてLTSに統合しました。Intel QATによりユーザーは、第4世代以降のIntel Xeonスケーラブルプロセッサーで暗号化と圧縮を高速化し、CPU利用率の低減およびネットワーキングおよびストレージアプリケーションの性能改善が可能となります。

Intelのバイスプレジデント兼システムソフトウェアエンジニアリング担当ジェネラルマネージャーであるMark Skarpness氏は次のように述べています。「UbuntuはIntelの高度な機能の多くを活用する上で最適です。CanonicalとIntelは、複数のプラットフォームにわたって大規模にパフォーマンスとセキュリティを確保するという理念を共有しています。

LTSツールチェーンによる開発生産性の向上

Ubuntu 24.04 LTSにはPython 3.12、Ruby 3.2、PHP 8.3、Go 1.22が含まれ、.NET、Java、Rustでの開発に重点が置かれています。

.NET 8の導入により、Ubuntuは.NETコミュニティのサポートにかなり力を入れました。.NET 8はUbuntu 24.04 LTSと22.04 LTSでライフサイクル全体にわたって完全にサポートされ、開発者はUbuntuリリースをアップグレードする前にアプリケーションを新しい.NETバージョンにアップグレードできます。この.NETサポートはIBM System Zプラットフォームにも拡大されました。

Azure Cloud NativeのコーポレートバイスプレジデントであるJeremy Winterは次のように述べています。「Canonical Ubuntu 24.04 LTSの公開、そして性能、開発生産性、セキュリティの向上を両社のお客様にお届けできることをうれしく思います。UbuntuはMicrosoft Azure上で支持されているLinuxディストリビューションであり、.NET、Windows Subsystem for Linux、Azure Kubernetes Service、Azure Confidential Computingなど多くのMicrosoftテクノロジーの重要な要素です。MicrosoftとCanonicalは、Azureの更新インフラストラクチャから開発ツール(特にNoble Numbatリリースに当初から含まれる.NET 8)まですべての設計において緊密な関係を維持しています。当社は今後もCanonicalと協力し、開発生産性を高めるとともに、AzureでUbuntuの安定した機能を確保していきたいと考えています。」

Java開発者にとっては、OpenJDK 21がUbuntu 24.04 LTSのデフォルトですが、バージョン17、11、8のサポートも維持しています。OpenJDK 17と21はTCK認証も取得し、Java規格への準拠と他のJavaプラットフォームとの相互動作が保証されています。Ubuntu ProユーザーはFIPS対応OpenJDK 11パッケージも利用できます。

Ubuntu 24.04 LTSにはRust 1.75に加えてシンプルなRustツールチェーンのsnapフレームワークが付属します。これによりカーネルやFirefoxなど主要UbuntuパッケージにおけるRustの使用が促進され、将来的に24.04 LTSにおける新バージョンの提供も可能となります。

Ubuntu DesktopとWSLに対応する新しい管理ツール

このたびLTSで初めて、Ubuntu DesktopがUbuntu Serverと同じインストーラ技術を採用しました。つまりデスクトップ管理者がautoinstallやcloud-initなどのイメージカスタマイズツールを使用し、自社開発者向けの機能をカスタマイズできるということです。ユーザーインターフェイスもリニューアルされ、Flutterのモダンなデザインとなりました。

またWindowsとUbuntuの混合環境の管理者を想定し、Ubuntu Proで提供されているActive Directory Group Policyクライアントは、Active Directory Certificate Servicesによる企業プロキシ設定、特権管理、リモートスクリプト実行をサポートしました。

Canonicalは引き続き、開発者やデータサイエンティスト向けの高度なプラットフォームとしてWindows Subsystem for Linux(WSL)でのUbuntuに投資しています。Ubuntu 24.04 LTS以降、WSLのUbuntuはcloud-initにより、複数の開発環境にわたってイメージのカスタマイズと標準化に対応します。

クラウド/プライベートデータセンターでのコンフィデンシャルコンピューティング

コンフィデンシャルコンピューティングは、ハイパーバイザーを含むホスト特権付きシステムソフトウェアにおいて実行時に脆弱性からデータを守ります。また、インフラストラクチャ管理者によるデータへの不正アクセスも防ぎます。

現在Ubuntuは、Microsoft Azure、Google Cloud、Amazon Web Servicesにわたりコンフィデンシャル仮想マシンを最も幅広く取り揃えています。

Ubuntuは、Microsoft Azureでのプレビューを皮切りに、パブリッククラウド上でコンフィデンシャルGPUをサポートする最初で唯一のLinuxディストリビューションでもあります。NVIDIA H100 Tensor Core GPUおよびSEV-SNPのAMD 4th Gen EPYCプロセッサーの革新的なシリコンを土台としたUbuntuのコンフィデンシャルVMは、機密データを使用したAIトレーニングと推論タスクに最適です。

Ubuntuはプライベートデータセンターでもコンフィデンシャルコンピューティングをサポートします。IntelとCanonicalの長期協力により、UbuntuはIntelに最適化されたUbuntu 23.10以降、ホストとゲストの両側でIntel® Trust Domain Extensions(Intel® TDX)をシームレスにサポートします。  Intel TDXによるVM分離は、アプリケーションレイヤに追加料金が要らず、コンフィデンシャルコンピューティング環境への既存ワークロードの移植と移行を大幅に簡素化します。

新しいUbuntu Proのアドオンで12年間のサポート

企業ユーザーのニーズに応え、Ubuntu 24.04 LTSでは12年間にわたってセキュリティメンテナンスとサポートを提供します。他の長期サポートのリリースと同様、Noble NumbatにはUbuntuのmainリポジトリに対する5年間のセキュリティメンテナンスが無償で付属します。Ubuntu Proは、mainとuniverseの両方のリポジトリに対してメンテナンスを10年に延長します。Ubuntu Proをご契約のお客様は、新しいLegacy Supportアドオンの購入でさらに2年間追加できます。

12年間のメンテナンスは、14.04 LTS以降の早期のUbuntuリリースにも適用されます。LTS拡張は、Ubuntuの幅広いオープンソースソフトウェアライブラリを活用しつつ、さらに安定性を確保したい個人/企業ユーザーにおすすめします。

次の段階

Canonicalについて

Ubuntuを提供するCanonicalは、オープンソースのセキュリティ、サポート、サービスに特化した企業です。ポートフォリオには、極めて小型のデバイスから大規模なクラウド、カーネルからコンテナ、データベースからAIまで、重要なシステムを幅広く含みます。Canonicalは、大手技術ブランド、スタートアップ企業、行政、ホームユーザーを取引先に持ち、すべての皆様に信頼性の高いオープンソースを提供します。

詳細はhttps://canonical.com/をご覧ください。

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