LinuxのノートPCを調達する際の注意点
by Canonical on 25 March 2025
機器の調達はビジネスの成否に直接影響する要素です。購入する機器によって、チームがどのようにプロジェクトを遂行し、成功に貢献できるのかが決まるからです。では、LinuxノートPCに関して「十分な装備」とはどのようなものでしょうか?
このブログ記事では、LinuxノートPCを調達する際のベストプラクティスを紹介します。取り上げる内容は、ハードウェアを最大限に活用し、コンプライアンス目標を達成し、確実に長期的な成功を収める方法です。
LinuxノートPCの定義
調達には要件が伴うものであり、担当者はそれに忠実に従うことが求められます。LinuxノートPCを調達する目的が特殊なユースケース(AIやグラフィックスなど)であっても、一般的なデスクトップ用途であっても、「LinuxノートPC」という用語を定義することが重要です。
Linuxはそもそもハードウェアに依存しないため、ほとんどどんなノートPCでも「LinuxノートPC」になります。Linuxをインストールするだけです。ただし、Linuxディストリビューションの多様性や、ソフトウェアベンダーとハードウェアベンダーの両方が提供する各種のサポートモデルを考えると、ハードウェアだけの問題ではありません。LinuxノートPCの調達は、まずハードウェアとソフトウェアのバランスを取ることから始め、全体像を考慮する必要があります。
ソフトウェアとハードウェアのバランス
ハードウェアとソフトウェアは相互に依存しています。セキュリティ、安定性、パフォーマンスの目標を達成するためには、適切な組み合わせを見つける必要があります。ユースケースの専門性が高いほど、全体的な意思決定においてハードウェアが果たす役割は大きくなります。これは、特化されたハードウェアがそれほど多くないからです。Linuxは選択の幅を広げてくれますが、一般的なデスクトップよりも厳しいパフォーマンス要件に対応できるディストリビューションとサポートモデルを選択する必要があります。
さまざまなノートPCで高レベルのパフォーマンスを発揮することが実証されているLinuxディストリビューションを選択すれば、ハードウェアレベルでの選択の幅が大きくなります。そこで威力を発揮するのが認定です。
認定の価値
どのLinuxディストリビューションを使う場合でも、それが対象のハードウェアで動作することと、特定のニーズに対応できることがわかっていなければなりません。そこで認定です。認定プログラムでは、発行元がラボ環境でOSをテストして最適化し、ハードウェア上でスムーズに動作することを確認します。これは、誤動作が許されない特殊なユースケースでLinuxノートPCを使用する場合に特に重要です。
一貫したエクスペリエンス
ある組織が提供する認定プログラムは、どれくらい徹底しているか、そして認定を与える(あるいは与えない)基準について透明性があるかどうかを確認することが重要です。たとえばUbuntuは、コンシューマ向けや企業向けから、プロシューマー向けやワークステーション向けまで、1,000種類以上のノートPCで認定されています。Canonicalでは、UbuntuとノートPCの互換性および各デバイスに対して実施される徹底したテストをカバレッジガイドで文書化しており、必要な基準を満たしてないデバイスは認定が保留されます。これにより、すべてのユーザーに対する一貫したエクスペリエンスが保証されます。
継続的なパフォーマンス
認定の目的は、異なるデバイス間で一貫したエクスペリエンスを実現するだけではありません。更新やパッチの適用を通じて、必要なパフォーマンスを継続して提供できるようにすることもその目的です。Canonicalを例にとると、すべてのUbuntu認定済みノートPCは、特定のUbuntuリリースのEoL(サポート終了)まで、パッチ適用とメンテナンスによるサポートを受けることができます。またCanonicalは、Dell、Lenovo、HPとの直接的なパートナーシップを通じて、デバイス固有のニーズを満たすために積極的に取り組んでいます。認定プロセスの過程で発生した問題を修正するために緊密に連携し、各デバイスが期待どおりのパフォーマンスを発揮できるようにします。
コンプライアンスの実証
コンプライアンスに準拠したLinuxノートPCとはどのようなものでしょうか? それを決めるのは組織のコンプライアンス要件と、活動拠点を管轄する法律や条例です。コンプライアンステストに合格できなければ、それだけで考慮に値しない選択肢となります。
認定は、コンプライアンスを達成するうえで重要な役割を果たします。特定のノートPCモデルでサポートされているOSを使用することで、脆弱性や悪用につながるおそれのある予期せぬ動作やプロセスのリスクを低減することができます。Ubuntuを例にとると、セキュアブートなど組み込みのセキュリティ機能が意図したとおりに機能することを確認するため、認定の過程でテストが行われます。これにより、選択したハードウェアとソフトウェアの組み合わせがサポートされ、安全であることを実証できます。
さらにUbuntuの長期サポートリリースでは、セキュリティとパッチが5年間提供されるほか、Ubuntu ProサブスクリプションとLegacy Supportアドオンを利用すれば、これを12年間に延長できます。これは、適切なディストリビューションとサポートモデルを選択することがどちらも重要であることを示しており、ノートPCが寿命を迎えるか、それとも高いパフォーマンスを発揮し続けるかの分かれ目となります。
認定以外の要素
認定は調達という活動全体において重要な要素といえますが、OSがもたらす認定以外の要素についても考慮することが重要です。ノートPCを稼働させ続けるだけでなく、ノートPC群全体の大きな目標を達成するのに役立つOSが必要です。このセクションでは管理に焦点を当て、Ubuntuを使用して考慮すべきポイントを説明します。
最新の企業アプリケーションのサポート
LinuxノートPCに求められる最終的な目標は、エンドユーザーが期待する水準のパフォーマンスを発揮することです。OSをハードウェアでスムーズに実行できることだけでなく、アプリケーションレベルでは、OS上でネイティブに動作する成熟したアプリケーションのエコシステムにも注目する必要があります。
Linuxは、APIを通じて新しいアプリケーションを取り入れる柔軟性を備えていますが、この方法を原則とするのではなく、例外として考えるべきです。多様なニーズを持つノートPC群のコアアプリケーションのオンボーディングと保守に管理者の時間を取られてしまうと、拡張性はまったく生まれません。また、非ネイティブなアプリケーションでは、エンドユーザーが期待するパフォーマンスを提供できない可能性があります。
UbuntuのようなOSを選択することで、生産性からコーディング、グラフィックス、AIに至るまで、36,000を超えるツールチェーンとアプリケーションから構成された広範なエコシステムにアクセスできるようになります。Ubuntuに対して積極的な貢献を行っているユーザーのコミュニティと、Canonicalが提供する長期的なセキュリティ保守およびサポートの両方に支えられているため、エンドユーザーはネイティブに動作し、安定したエコシステムへのアクセスが可能になります。
コンプライアンスの堅牢化ツール
CISやDISA-STIGなどの規格に準拠するためにLinuxシステムを監査、堅牢化、保守する作業は、時間はかかりますが不可欠なプロセスです。ただし、コンプライアンスと堅牢化に対応したツールを組み込んだディストリビューションを選択すれば、そのような作業にかかる時間とミスの両方を低減できます。このようなツールが揃っているディストリビューションなら、おそらく長期的に信頼して使用できます。
Ubuntuを例にとると、FIPS-140、NIST、DISA-STIG、Common Criteriaを対象とした長期サポートリリースをCanonicalが実施しており、これらをはじめとする規格に対応した自動堅牢化ツールをUbuntu Proサブスクリプションを通じて提供しています。
IT管理とガバナンス
個々のノートPCだけでなく、ノートPC群全体がガバナンスの観点から管理可能でなければなりません。大規模なノートPC群を手動で管理することは、非効率的であり、危険でもあります。Verizon社のレポートによると、データ侵害の約11%はシステム管理者の責任であり、その原因の多くは構成ミスであると推定されています。世界で最も安全なハードウェアを使用していても、適切なアプローチがなければLinuxノートPCは脆弱になってしまいます。
OSは、デバイスの現状を監査するための可視性と、大量の手動作業を行うことなくアクセス管理や更新を大規模に展開できる管理機能を持つものを選択する必要があります。
たとえばUbuntuは、Entra ID(Microsoft用)やAuthDなどのID管理プロトコルをサポートしています。AuthDは、企業向けおよび消費者向けIDプロバイダーの大多数がサポートしているオープンスタンダードです。Ubuntuは、任意のデバイス管理プラットフォームと統合することもできますし、Canonical Landscapeを使用することもできます。
最小限の攻撃対象領域
優れたディストリビューションは、ファームウェアへの定期的なパッチによってLinuxノートPCに組み込まれたハードウェアセキュリティを活用するとともに、ゼロトラストアプローチによってソフトウェアレイヤーの安全性を確保します。全体として、ディストリビューションはLinuxノートPCの攻撃対象領域を増やすのではなく、減らすように積極的に作用するものでなければなりません。
たとえばUbuntuには、ノートPCの攻撃対象領域を最小化するプリコンフィギュレーションがあり、LinuxノートPCへのどんなアクセスもデフォルトで与えられることはなく、必要な場合にのみ与えられます。これを反映するものとしては、自動セキュリティパッチ、パスワードのハッシュ化、オープンポートの禁止(物理的なセキュリティにとって重要)、非特権ユーザーに対する制限などがあります。
長期的なサポート:コンプライアンスとパフォーマンスの両立
LinuxノートPCは、結果的に長期使用することが多くなるため、サポートとセキュリティの維持が求められます。そのいずれかの条件が満たされなくなった場合、通常は製品寿命に達することになりますが、どれくらいの期間を想定されているでしょうか?
ある程度の余裕を持たせるためにも、実際に想定する耐用年数よりも長く使えるノートPCを調達すべきです。
長期的なサポートが価値を持つのはこのためです。正確な耐用年数を見積もるには、ハードウェアベンダーとソフトウェアプロバイダーの両方が提供するサポートを調査する必要があります。Ubuntu LTSリリースは標準で5年間サポートが提供されますが、オプションのExpanded Security Maintenanceにより合計で最大12年間まで延長されます。これには36,000を超えるパッケージに対するセキュリティパッチとメンテナンスが含まれ、Ubuntu LTSが実行されていれば、どのような認定デバイスでも対象となります。
最適なUbuntuノートPCをお探しの方は、Ubuntu認定済みノートPCをご覧ください。
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