Ubuntu 22.04 LTSを公開
by Canonical on 22 April 2022
※本プレスリリースは2022年4月21日に英国ロンドンで発表したプレスリリースの日本語訳です。
Canonicalは、Ubuntu 22.04 LTSの一般提供を開始しました。クラウドでのコンフィデンシャルコンピューティング、産業用アプリケーション向けのリアルタイムカーネル、企業におけるActive Directory、PCI-DSS、HIPAA、FIPS、FedRAMPコンプライアンスの点で飛躍的に進歩しており、クラウドからエッジ、IoT、ワークステーションのオープンソース技術をレベルアップすると期待されます。Canonicalは業界大手との提携により、企業グレードのセキュリティと長期メンテナンスを提供し、主要アーキテクチャ、ハードウェア、クラウドすべてをサポートします。
Canonicalの最高経営責任者(CEO)であるMark
Shuttleworthは、次のように述べています。「Canonicalのミッションは、どんな用途にもセキュリティ、信頼性、一貫性を備えたオープンソースプラットフォームを提供することです。Ubuntu 22.04 LTSは、通信、産業オートメーションなどインフラセキュリティ要件の厳しい業界で革新の道を開き、デジタルトランスフォーメーションを支えます。」
コンフィデンシャルコンピューティングとArmがパブリッククラウドの革新を推進
Ubuntuは、パブリッククラウドに緊密に統合され、性能、セキュリティ、使いやすさを最適化しています。ここに新しく加わった重要な機能がコンフィデンシャルコンピューティングです。これは、大手パブリッククラウドでデータ保護とプライバシーを大幅に改善し、すでに導入済みのアプリケーションを変更する必要はありません。
Ubuntuは、Azure
Confidential VMをサポートする唯一のLinuxディストリビューションです。Azure Confidential Computingの製品責任者であるVikas Bhatia氏は次のように述べています。「AzureのConfidential VMは、クラウド利用企業の間だけでなく、利用企業とAzure運用事業者の間の機密性も守ります。UbuntuとAzure Managed HSMは、ハードウェアレベルで暗号化したゲストアイソレーションに加え、メジャードブートやTPMを使用したフルディスク暗号化により、お客様のコードやデータを、使用中、送信中、保存中のいずれも暗号化キーを使用して暗号化します。暗号化キーはお客様側で保護と管理が可能です。」
「Canonicalは、革新的なコンフィデンシャルコンピューティングを実現する取り組みにおいて、当社と最初から緊密に協力する重要なパートナーです。」
Armで確実に高性能を得るため、CanonicalはUbuntu
22.04 LTSのイメージをAWS Gravitonにも最適化しました。UbuntuはAWSではEC2から入手でき、最新のGravitonチップのサポートを含め、コンテナに至るまで複数のイメージがあります。
Oracle Cloud InfrastructureはCanonicalと緊密に協力し、すべてのハードウェアにUbuntuを採用しました。Oracleのデベロッパーリレーションズ担当シニアディレクターであるBo English-Wiczling氏は、次のように述べています。「Oracle Cloud InfrastructureのUbuntu 22.04 LTSにより、開発者は、卓越したブート速度、セキュリティ、安定性を持つ高度に最適化されたオペレーティングシステムとカーネルが得られます。最新のArmサーバーであるAmpere A1を含めることで、Oracleはあらゆるタイプのワークロードに高性能でコスト効果の高いソリューションを提供します。」
開発者はUbuntuを愛用
革新的なRaspberry Piユーザーを想定し、Ubuntu 22.04 LTSは、LTSリリースとして初めてRaspberry Pi 4でUbuntu Desktopをサポートしました。Raspberry Pi Tradingの最高経営責任者(CEO)であるEben Upton氏は、次のように述べています。「Ubuntu 22.04 LTSにより、新しいRaspberry Pi Zero 2WからRaspberry Pi 4まで、最近のすべてのRaspberry Piデバイスが初めてサポートされます。2GBのRaspberry Pi 4をサポートする認定Ubuntu Desktopリリースの公開をうれしく思います。これにより世界中の開発者が最も手頃な価格の開発用デスクトップ環境を利用できることになります。」
Ubuntu WSLは、Visual Studio CodeやDocker Desktopなど、ネイティブのWindows開発環境と共有ファイルシステムを通じて緊密に統合しています。ユーザーはWindowsとLinuxのコマンドを混合し、データサイエンス、ウェブ開発、ITシステム管理の効率的なワークフローを作成します。Ubuntu WSLのユーザーはすぐに22.04 LTSにアップグレード可能です。
CanonicalはOEMと提携し、LinuxとWindowsの開発を合理化する目的で、企業向けのUbuntu WSLをWindowsワークステーションで有効化して提供しています。Dell TechnologiesのPrecisionワークステーション部門人工知能戦略担当ディレクターであるKyle Harper氏は、次のように述べています。「DellのWSL対応Precisionワークステーションは、Ubuntuの力をWindowsユーザーに提供します。NVIDIA CUDA、Tensorflow、PyTorchなどのツールに対応するUbuntu WSLは、ベアメタル上で実行した場合に近いレベルまでデータサイエンスやAI/MLのワークロード処理速度を高めます。多くのAI/ML/DLワークロードでは、UbuntuとWindowsの切り替え時に再起動する必要はありません。
Windows/MacOS開発者は、完全なcloud-initによってMultipassでUbuntu 22.04 LTS VMをオンデマンドで起動し、自宅でクラウドプロトタイピングに使用できます。Apple M1のサポートを加えたMultipassは、新しいArmクラウドインスタンスの開発に最適な方法です。MultipassはDockerワークフローのサポートも追加し、クラウドアプリケーションとクラウドネイティブアプリケーションの開発者体験を統合しました。
共有開発環境の場合、マルチユーザーLXDはユーザーごとのプロジェクト分離を可能にし、特定のユーザー許可を制限することで、複数の人間が安全に同じLXDクラスターを共有できるようにします。
データを多用するワークロードに適したプラットフォーム
Ubuntuは、AzureでMicrosoft SQL Serverを実行するためのプラットフォームとして人気が高く、企業グレードのサポートも提供します。Ubuntu Pro LTS for Azureで動作するSQL Serverは、卓越した拡張性と性能を備えています。また、ビジネスにとって重要なSQL ServerワークロードにAzure上で包括的なオープンソースセキュリティを提供します。Ubuntu Pro上のSQL Serverは、MicrosoftとCanonicalに支えられ、ソリューション全体に年中無休24時間サポートが付属します。
Ubuntu 22.04 LTSでは、NVIDIA仮想GPU(vGPU)ソフトウェアドライバーが一般に提供されます。データサイエンティストはNVIDIA vGPUソフトウェア14.0をネイティブインストールし、高性能のGPUリソースを複数の仮想マシンで同時に利用できます。これによりデータサイエンティストは高度なAI/MLワークロードを並行処理または隔離すると同時に、基本となるハードウェアリソースを効率的に使用できます。
AI/ML、HPC、データサイエンスワークロードの需要を満たすため、開発者や企業は、UbuntuをサポートするNVIDIA DGXシステムのほか、NVIDIA AI Enterpriseソフトウェアスイートを実行するNVIDIA認定システムを使用するNVIDIAの高速コンピューティングに依存しています。
NVIDIAのエンタープライズコンピューティング担当バイスプレジデントであるManuvir Das氏は、次のように述べています。「AIソリューションを構築する企業、データサイエンティスト、開発者は、MLOpsワークフローに容易に対応できる総合的なシステムとソフトウェアを求めています。Ubuntu上でNVIDIA AIを実行すれば、業務を簡素化し、安全性を高め、コミュニケーションを改善する新製品や新システムにより、人類にとって最大の課題を解決することも可能です。」
Canonicalは、企業グレードのセキュリティメンテナンスと年中無休の24時間サポートを提供し、MySQL、PostgreSQL、Redisなど幅広いオープンソースSQLと非SQLデータベースシステムに対応します。Canonicalは、大規模なデータ処理ストリーミングに対応するため、包括的で、高度に自動化され、フルサポートを備えたソリューションとしてCharmed Apache Kafkaを発表しました。Charmedソリューションは、多くのソフトウェアを使用する複雑なシステムの導入と運用を自動化します。Kubernetesなどのクラウドネイティブソリューションを使用するエンジニアは、主なオープンソースデータ処理ソリューションに対応する新しいDockerコンテナイメージを利用できます。
LTS Dockerイメージ
Ubuntu 22.04 LTSベースイメージは、Canonicalが管理するセキュアで安定したLTSアプリケーションコンテナイメージのポートフォリオとともにDocker Hubで提供されています。
Dockerのセキュアソフトウェアサプライチェーン担当SVPであるWebb Stevensは、次のように述べています。「Ubuntuは、極めて人気の高いDocker公式イメージとしてDocker Hubで重要な役割を果たしています。Canonicalは、ベースイメージのほか、Docker Verified Publisherプログラムの一員としてセキュアで安定したOCI適合イメージのポートフォリオも公開し、しっかり管理しています。Docker Verified Publisherとして、Canonicalは開発者に対し、信頼できるコンテンツへのスムーズなアクセスをDocker Hubを通じてレート制限なしに提供します。
Ubuntu上の既存のLTS Dockerイメージは、新しい長期サポート付きの22.04ベースのトラック(MySQL、PostgreSQL、NGINXなど)を受信します。オープンソースのアプリケーションポートフォリオは、オブザーバビリティやビッグデータに重点を置いてさらに拡大し、Grafana Loki、Apache Kafka、Apache Cassandraコンテナイメージも追加されています。
通信および産業用アプリケーション向けのリアルタイムカーネル
Canonicalは、Ubuntu 22.04 LTSリアルタイムカーネルのベータ版発表をうれしく思います。5Gに向けた通信ネットワークの変革ニーズを想定してリアルタイムカーネルを採用したUbuntu 22.04 LTSは、重要なインフラにふさわしい性能、確実な超低レイテンシ、セキュリティを提供します。この新しいカーネルは、産業オートメーションやロボットなどレイテンシ重視の用途にも対応します。
IntelのマーケティングディレクターであるDan Lynch氏は、次のように述べています。「Ubuntu 22.04 LTSのリアルタイムカーネルは、Cloud RANなど低レイテンシの求められるリアルタイムアプリケーションにも対応します。IntelはCanonicalとともにFlexRAN SDKを検証し、5Gのレイテンシ要件を満たすためにプリエンプティブなリアルタイムカーネル機能を必要とするOpenRAN実装を可能にしました。」
x86/Arm64アーキテクチャ向けに統合されたPREEMPT_RTパッチセットにより、Ubuntuのリアルタイムカーネルは極めてレイテンシへの依存度の高い事例に対応し、確定した応答時間でイベントに対処します。
OpenRANモデルでモバイルネットワークを開発し、提供するIS-WirelessのテクニカルリードであるRadoslaw Adamczyk氏は、次のように述べています。「Ubuntu 22.04 LTSのリアルタイムカーネルは、Intelハードウェアの高速処理を生かし、最大のネットワーク機器プロバイダーとの対等な競争も可能にします。このテストと検証を終えたセキュアな1つのプラットフォームで、MAASを搭載したベアメタルからUbuntu OS、LXD VM、エッジのMicrok8sまで、スタックすべてに対応できます。」
企業コンプライアンスの強化
Canonical Ubuntuは、PCI-DSS、HIPAA、FedRAMPなどさまざまな業界コンプライアンス規格への適合を容易にします。
LaunchDarklyのセキュリティエンジニアであるPatrick Kaeding氏は、次のように述べています。「AWS上のFIPS 140-2認定Ubuntuイメージは、当社のFedRAMPコンプライアンス要件を満たします。Canonicalによる企業グレードのUbuntu LTSサポートと10年間の保守契約により、LaunchDarklyは世界的に有名なブランドにも重要な開発インフラを提供しています。」
セキュリティ管理業務をサポートするため、Canonical Ubuntu LTSリリースに対応するCVEおよび関連の脆弱性情報は、OVALストリームとして公開され、業界標準のスキャン/監査ツールに統合されています。
Tenableの最高セキュリティ責任者(CSO)Robert Huber氏は、次のように述べています。「TenableとCanonicalは、舞台裏での協力により、TenableのVulnerability Management製品スイートで、Ubuntu LTSの10年間のライフサイクルにわたって高精度で有用な最新のセキュリティ脆弱性アラートを表示します。両社は共通のお客様に対し、セキュリティ、安定性、信頼性を備えたオープンソースプラットフォームを提供します。」
Active Directoryは現在、高度なグループポリシーオブジェクトによってUbuntuインストーラで完全にサポートされており、Active Directory内で詳細なユーザー許可やスクリプト実行制御が可能です。
LenovoのPC&スマートデバイス向けSW/Cloud担当バイスプレジデントであるIgor Bergman氏は、次のように述べています。「Ubuntu 22.04 LTSは、Windowsデバイスと同じツールでUbuntuデバイスの管理を可能にするほか、Thunderbolt 4、5Gモデム、Wi-Fi 6Eの追加サポート、パワースライダーやePrivacy画面などの新機能も備えています。Lenovoは、今後もCanonicalとの協力を続け、Ubuntu 22.04 LTSリリースで今後のThinkPad、ThinkCentre、ThinkStationプラットフォームを展開することを楽しみにしています。」
スピード、性能、カスタマイズ性
Ubuntu 22.04 LTSは、メモリーセーフのシステムレベルプログラミングに対応するRustを追加します。またOpenSSL v3に移行し、新しい暗号化アルゴリズムによってセキュリティを向上します。
Ubuntu Desktop 22.04 LTSは、GNOME 42によって使いやすさ、バッテリ寿命、性能が大きく改善されています。GNOME 42は、GNOMEパワープロファイルと効率的なワークスペース移行のほか、IntelおよびRaspberry Piグラフィックスドライバーでのデスクトップフレームレートを2倍に高める大幅な最適化を採用しています。
Ubuntu 22.04 LTSでは、Yaruのダークテーマとライトテーマに対応する10種類のファッショナブルなアクセントカラーのほか、多様なコミュニティ壁紙を使用可能です。
Ubuntu 22.04 LTSは、Ubuntuダウンロードおよび主要パブリッククラウドで公開中です。
Canonicalについて
Canonicalは、コンテナ、クラウド、ハイパースケールコンピューティング分野の主要OS「Ubuntu」の開発を支援します。Ubuntuは、ほとんどのパブリッククラウドのワークロード、新しいスマートゲートウェイ、スイッチ、自動運転車、高度なロボットで使用されています。Canonicalは、Ubuntuの商用ユーザー向けにエンタープライズセキュリティ、サポート、およびサービスを提供しています。Canonicalは2004年に設立された非公開企業です。
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